「 野 球 は、未 来 !」

kyukatsu LEGEND 赤星 憲広

赤星さんは、2001年に大卒社会人からドラフトで阪神タイガースに入団。その後、5年連続で盗塁王を獲得しました。2009年に怪我により引退を余儀なくなされましたが、その後は野球解説者、関西大学客員教授と活動範囲を広げ、地方自治体と協力してマラソン大会を開催したり、スポーツを通じてチャリティの輪を広げることにも尽力しています。さまざまな活動を通じて、若い世代に野球をどのように伝え、広めようとしているか。お話しを聞きました。


野球解説者として「次にくる選手」を発掘するのが楽しみです。

野球解説者として、日本テレビの『Going!Sports&News』にレギュラー出演させてもらい、プロ野球の面白さを視聴者やファンの方にお伝えするのがメインの仕事ということになります。他にNPO法人『レッドスターベースボールクラブ』(奈良県山添村)という少年野球チームのオーナーも務めています。最近は野球解説者の仕事が忙しく、自ら教える機会は減っていますが、現役時代は自主トレを兼ねて子どもたちとよく野球をやっていました。
“伝える立場”として大切なのは、試合や選手を自分なりの視点で分析し、視聴者にお届けすること。皆さんも知っているレギュラー出場している選手ではなく、いまは2軍だけども今後1軍で活躍するような選手をピックアップして視聴者やファンの方にもっと知ってほしいと思っています。
また、高校野球や大学野球、社会人野球といったアマチュア野球も全般的に観ます。高校野球にはスター選手には注目しますが、陰ながら活躍してる選手を見つけては将来プロに上がってくるだろうか、などと考えながら観戦することも多いですね。特に甲子園や東都大学リーグ、都市対抗野球はかつて自分が所属してきた場でもあるので、楽しみながら毎試合注目しています。


選手だけでなく球団の活動も積極的に伝えて行こうと思います。

ファンの方にとっても、自分が応援する選手や球団だけでなく、いろいろな選手や他の球団の動向を知るのは大切なことです。12球団それぞれ個性があり、想像以上に独自のファンサービスを展開しているからです。
たとえば「カープ女子」現象と言われていますが、広島カープに若い女性の観客動員が増えたことはとても参考になります。楽しい催しがあるから行ってみたい、仲間を誘って観てみようという気持ちを起こせるかどうか。野球を観るのは楽しいと思ってくれれば、その方たちが自分の子どもに野球をすすめるきっかけになるかもしれません。
また、他の球団の活動を知ると、野球の見方が変わってきます。僕は阪神タイガースを辞めてからいろいろなチームのキャンプを取材するようになってそのことに気付きました。そして球団のファンに対する活動までも伝えるのが僕の仕事だと思っています。


野球選手と野球解説者のプレッシャーの違い。

やはり野球解説者よりも現役のプロ野球選手のほうが仕事は大変です。とはいえ、その大変さに大きな違いはありません。
野球選手はみんな思うでしょうが、お客様にチケットを買ってもらって球場に来ていただき、満足してもらわないといけない。 “いい結果”を出して満足してもらうことがプロ野球選手にとっては最もプレッシャーになります。僕も9年間、肉体と精神をすり減らしながらやってきました。野球解説者に変わりましたが、視聴者の方が「そんな解説あるか?」と疑問に思われるような伝え方はできませんし、選手のがんばりを上手く伝えられず、ファンから反発をくらうようなことがあってはなりません。逆に、選手がだらけたようなプレーをすれば、活を入れてお伝えするのが自分の役割だと思っています。
この仕事に転向して8年が経ちましたが、選手時代より違った意味で難しさを感じつつ、充実感も感じます。大切にしてきたのは自分のスタイルやキャラクターといったものを貫くこと。自分を貫いて歩んでいれば、年数を重ねていくうちにいろいろな意見を聞いたり、励ましてくれたり、認めてもくれます。野球も同じで、自分のスタイルを変えてしまうと結果を残すのは難しい。継続こそ力なのです。


野球をもっと身近に夢を与えるスポーツに。

僕が子どもの頃は、みんなで空き地に集まれば普通に野球をやっていたし、テレビではいつもプロ野球を放送していました。当時は野球人気は絶頂だったので、ラグビーやサッカーのように、そのスポーツをするための土台作りや普及といった地道な努力をしてこなかった。ところが子どもの人口が減り、野球ができる環境も少なくなってしまい、野球人気も低迷することに。もっと野球を身近に感じてもらう環境をつくり、野球に触れる機会を増やさないと野球の夢は広がりません。2020年の東京オリンピックで野球が復活しましたが、この機会に、私も仕事を通して野球の魅力を伝えようとしています。


野球の試合を面白く観るコツとは。

野球の魅力を知るにはどうすればいいか。それにはまず、球場で生の試合を観戦してもらうのが一番ですが、球場が無理でもテレビで試合を観て欲しいんです。スマートフォンでも「○○選手がヒット3本打った」という結果はわかりますが、ヒットの中身まではわかりません。初球に打ったのか、ファールをめちゃめちゃ打ってからヒットを打ったのか。
野球は他のスポーツと違って圧倒的にルールの数が多い。それだけルールが必要になることが試合中に起きるということです。たとえば、ある試合でホームランを打ったランナーがホームベースを踏み忘れた。それをキャッチャーは見逃さなかった。しかし、踏んでいないとアピールしたのは審判が「プレーボール」を宣言してからです。なぜその時に言わないのか、わからないですよね。野球ならではのルールがそこにあり、だからこそ生の試合は面白い。僕はこうしたことが野球の奥深さであると思っています。
それから、球場に行くのはとても刺激的なことですが、試合を全部見ようとするのは難しいものです。集中力も続きません。そこで特定の選手をターゲットとし、ずっと追いかけて見るのはどうでしょう。自分の好きな選手を一人決め、守備の様子を見たり、バッターボックに立った時はもちろん、ネクストバッターズサークルで待機中にどんなことをしているか観察してみるのです。そして、1打席から4打席まで分析してみましょう。自分の憧れの選手であれば、動き方のすべてが参考になるでしょう。こういう楽しみ方は簡単にできるし、子どもの野球観戦にも応用できると思います。


野球は情熱、喜怒哀楽のすべて。

子どもの頃、野球を始める前は違うスポーツをやっていましたが、野球ほど情熱を注いだスポーツはありません。40年生きてきましたが、そのうち野球に携わったのが30年。人生大半が野球でした。冷めかけることはあっても、決して冷めないのが野球。情熱そのものです。解説しててもイラッとするプレーもあるし、すごいプレーで感激することもあります。つまり、喜怒哀楽のすべてが野球です。この先も野球人として情熱を持ち続けたいと思います。



レッドスターベースボールクラブ