内藤雅之氏 × 球活女子大生アンバサダー

2019年度の“東京六大学野球”春季リーグ戦が、いよいよ4月13日から明治神宮野球場で始まる。そんな東京六大学野球が「最近、盛り上がっていますよ。スマホなどでも観戦できますし」とは、大学入学当初から、定期的に東京六大学野球を観戦してきた球活アンバサダーの彼女たち。
なぜ最近、東京六大学野球が盛り上がっているのか?! 大学野球部の部員数も増えている? その理由を知るキーマンと言うべき公益財団法人 全日本大学野球連盟の内藤理事に球活アンバサダーメンバーが、大学生目線で、取材をさせていただきました。

梨子本朱里

「本日はお忙しい中、お時間を割いて頂き、ありがとうございます。本日、内藤様に取材をさせて頂けるということで、いろいろと内藤様のことも興味を持ち、資料を集めたところ…」

内藤理事(以下、内藤)

「まず内藤様でなく、内藤さんでいいから(笑)」

梨子本

「あっ、ありがとうございます。内藤さんも長く、野球をされていたと聞いています。立教中学3年のときにはピッチャーとして活躍し、優勝を経験。立教高校時代は、ポジションはショート。そして立教大学へ」

内藤

「もちろん大学進学後も、野球部に入部しましたよ(笑)」

梨子本

「そして大学1年の終わりに、監督さんから“マネージャーになって欲しい”とのお話しがあったそうですが、やはりプレイヤーとして野球に関わってきた内藤さんとしては、いろいろな思いがあったのでは?」

内藤

「大学1年のとき、秋季リーグ戦が終わった後、野球部の監督と、マネージャーをされていた先輩に呼ばれたことを今でも覚えています。一旦、家に帰宅して考えました…どうするべきなのかと」

梨子本

「中学時代から、プレーヤーとして野球をされてきた内藤さんだからこその、葛藤があったと思います」

内藤

「葛藤というか、本当に悩みました。たまたま、大学のスポーツなど詳しい叔父がいたので相談をしました。そうしたら“大学の体育会スポーツのマネージャーというのは、ある意味でプレーヤーとしての選手よりも、とても大変な部分があり、重要なポジションでもあるんだよ”などの説明を聞いて、”なるほど、そういうことだったりもするのか”と考えることができるようにもなり、マネージャーを受けることにしたんです」

梨子本

「マネージャーになると決めても、やはり迷いとかなかったですか?」

内藤

「迷いはないけど、マネージャーをするに際して、条件は出しました。同級生に対して“卒業するまで、マネージャーの意見に逆らわないこと”って(笑)」

梨子本

「私でも、そう言うと思います(笑)」

内藤

「真面目な話し、部員全員の意見をとりまとめたり、予算の管理もしていました。2年生になって名刺を作らせていただき、他大学や野球部のOBの方々と交流をとらせていただいたり…更に4年のときは団体の管理から試合に関する運営までやっていましたら、大変でしたよ」

梨子本

「そんなにお忙しいと大学の授業とか、どうされていたんですか?」

内藤

「大学の授業なんて、受ける暇がないほどでしたよ(笑)。まぁ、最低限の勉強はしつつも…マネージャーの魅力と言うか、責任感をもてるようになり、楽しくなっていきました。マネージャーをして、多くの人の意見をとりまとめる、スケジュールを管理しながら試合を盛り上げる方法を考えたり、プレーヤーでは体験できなかったことを多く学びましたね」

梨子本

「講義では教えてもらえない経験が、やはり社会人になり役立ったと思うのですが、いかがでしょうか」

内藤

「それは社会人となった今、かなり役立っていますよ。運営などで経験したことも活かしていますよ。例えば、集客のための工夫として、シニア層から“学生と一緒に応援席で応援したい”との声をうけて、一般の方にも開放したところ観客数も増えましたし…スマホ用の公式アプリなども始めましたが評判のようです。やはりマネージャーとしての経験が、こういう部分でも活きているのでしょうね」

塩見珠希

「スマホ用の公式アプリ、あれは面白いですよね。内藤さんが、学生ならではの視点をリーグ戦運営に取り入れ、学生ファンの増加につなげていると、野球好きの友人から聞きました」

内藤

「東京六大学野球って、本当に長い歴史があり最古の大学野球リーグでもあるからこそ、新しい風を…そういうことも大切だと考えています」

塩見

「先程のお話しの続きになりますが、マネージャーというと、高校野球のマネージャーなどをイメージしていました」

内藤

「そういう要素もあるけど、大学野球のマネージャーは試合の運営など、幅広くマネージメントもしなくてはならないという大変さはありますよ」

引田望月

「次の質問をさせていただきます。内藤さんは、大学の大、大先輩なのですが、野球に詳しい方に、内藤さんのことを聞きますと”プロアマの雪解けに尽力されてきた人物“等など、内藤さんの野球界へのご尽力がうかがえる内容ばかりです。そこで内藤さんに、まず大学野球全般のことを質問させていただきます」

内藤

「そうか、立教か…後輩なんだね。はい、質問を、どうぞ(笑)」

引田

「大学野球の部員が増えている、と聞くのですが本当ですか?私なりに周囲の意見なども鑑み考えてみたのですが、要因として昔は先輩から、大学1年生への対応が厳しく、退部する学生が多かったと思うのですが」

内藤

「まず知っておいて欲しいのは、大学の野球部というのは現時点で約380、これは他のスポーツに比べても多くて、例えばサッカーよりは30校ほど野球の方が多いんです。そして野球部の部員数は約2万8000~2万9000人ほどいます。ここ10年ほどで8000人ほど部員数は増えているんですよ」

引田

「そんなにも増えていたんですか?」

内藤

「ちなみに高校野球の場合、総部員数は15万人。だから1学年あたりの平均でいえば5万人。高校卒業後、大学への進学率は50~60%ぐらいかな…だとすると、高校を卒業した元野球部の学生が、もう少し大学へ進学して野球をやってもおかしくないかな、とは思っています。あと昔のイメージと異なって、大学の野球部というのは、勉学も重要視しているんですよ」

引田

「その話しは、同学年の野球部の友達からも聞いています」

内藤

「そう、例えば引田さんも通っている立教大学の野球部の場合、練習は4部制になっています。授業に合わせて、朝、昼、午後、夜に分けて練習をしています。一昔前だと1年生はずっと、1年間、ボール磨きをしている、ということもあったけど、今はやる気さえあれば野球の練習に参加もできるんです」

鳥海佐和子

「野球が好き、その思いさえ強ければ、野球が存分にできるというのは、やはり良いことだと思います」

内藤

「野球をプレイする人、野球を観る人、両方の立場にとって良い環境作りをしている、そう思っています」

鳥海

「次の質問をさせて頂きます。周囲の大学野球が好きな人と話しをしていても、大学野球に求めることのひとつとして”スポーツマンシップ”や”フェアプレイ“と答える人が増えています。友情、連帯の理念も含めて、内藤さんのご意見をうかがわせて下さい」

内藤

「“スポーツマンシップ”や“フェアプレイ”というのは、やはり大学野球では重要な要素だと思っています。これは、東京六大学野球連盟の内藤として話しをしますね。まず六大学って93年間、同じ対戦チームと試合をしているんですよ。戦争で中断はあったにせよ、諸先輩方の頑張りもあり、続いているんです」

鳥海

「私も資料を調べて、ほぼ100年の歴史があることを知り驚きました」

内藤

「そういう長い歴史の中で、勝ち・負けも大切なのですが、やはり最善を尽くして頑張ること、相手チームや選手を思うリスペクトが重要だと思っています。単なるリーグ戦ではない、1試合1試合に向けての思いが大切であり、相手を思う気持ちも重要なんです。勝敗以前に、リスペクトがあるからこそ、93年間も同じ大学での枠組みで“東京六大学野球”として継続できていると思いますよ」

鳥海

「なるほど、私もそう思います」

内藤

「あと大学生の本分として勉学は大切です。加えて、こういうスポーツで関わった仲間への思い、助けてあげたい、一緒に頑張ろう、そういう気持ちが生まれて、友情や連帯感も育まれているようです」

鳥海

「私もサークルや部活などで、より友情や連帯感を育めたと思っています」

内藤

「わたしもやはり野球部のときの仲間との友情は、今でも続いていますよ」

引田

「これはご相談といいますか、ご提案でもあるのですが…周囲の知り合いで、野球、それも東京六大学野球へ何度も応援へ行く人たちから聞く話しなのですが、東京六大学野球で“もっと一体感をもって応援したい”、そのために“プロ野球のように各大学野球部のレプリカユニフォームを着て応援したい”というのですが…」

内藤

「それは面白いと思いますよ。ただ商標権などの権利の問題があるかな…。それと、やはり東京六大学野球部の全てがそろってとなると、どこまで可能かなとは思うけど…。でも一体感を生み出す方法というのは、やはり大切な要素なので、あなた方で色々と考えてもらい、改めて意見を聞かせて下さい。何かしら方法を考えてみましょう」

鳥海

「東京六大学以外の他大学生が明治神宮へ応援に行くきっかけとして、各大学(例えば六大学だけでも)の学食の丼を球場で食べられるようになれば…。ここ最近、六大学の文化祭で人気のあった模擬店が出店しているのは知っているのですが…」

内藤

「昨年、そして今年と、各大学の文化祭で出店している人気の模擬店が明治神宮球場へ来たりしていますよ。東京大学は冷凍ミカン、立教大学は“とん平焼き”でした」

引田

「“とん平焼き”は大阪や関西方面で、おなじみの鉄板焼きですよね」

内藤

「神宮球場で、そういうことをやる場合、それこそ色々な権利関係もあるけど…各大学の学食で1番人気の1品だけでも、懐かしんでOB・OGの方々にも食べてもらえたらいいよね」

引田

「立教大学“第一食堂”のおすすめメニュー第1位“カツ丼”も(笑)」

内藤

「野球を盛り上げる、六大学野球を多くの方々が足を運んで下さり“観に行こう”となることはやっていきたいので、みなさんの意見を聞かせて下さい」

球活アンバサダーメンバー全員

「これからも東京六大学野球、そして学生野球も盛り上げていけるように尽力させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます」

※東京六大学野球連盟:加盟大学は、早稲田大学・慶應義塾大学・明治大学・法政大学・東京大学・立教大学。

「野球の魅力はいろいろとありますが、大学野球、特に東京六大学野球には“学生らしさ”などの魅力を感じます。プロ野球にない独自の魅力があるからこそ、多くのOB・OGの方々も神宮で大声を出し、観戦しているのだと思います。あと高校野球の場合、トーナメント戦で負けたら終わりですが、大学野球の場合、リーグ戦の場合が多いので、選手起用が面白いんです。秋季リーグ戦、最終戦が近くなると代打や代走でレギュラーではない4年生の方が出場…いろいろな思いをもってグラウンドにたつ選手に…つい感動です。他にも甲子園で活躍した選手が出場していたり、見どころ満載です(鳥海、梨子本、引田、塩見)」

「何度か神宮で東京六大学野球を応援をすると“応援席”で応援したくなります。飲食は基本禁止ですが、応援団の指示で一緒に応援ができ、迫力があり楽しいです。応援団の方などが応援歌をボードに書いてくれているので、初心者も安心! 私たちは各大学の選手個人を応援する場合や、大学を応援する“箱推し”などありますが…それぞれの楽しみ方で春・秋の神宮で応援してみましょう(鳥海、梨子本、引田、塩見)」


内藤雅之氏

立教大学 社会学部産業関係学科卒(1984年)。
同大学野球部では1年生の終わりからマネージャーを務める。
卒業後、東京六大学野球連盟へ。
現在、公益財団法人 全日本大学野球連盟/常務理事・事務局長。

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取材) 球活女子大生アンバサダー(鳥海佐和子、梨子本朱里、引田望月、塩見珠希)
撮影) 球活女子大生アンバサダーメンバー、大熊裕美