阪神タイガース 福留孝介 選手

1999年、ドラゴンズに入団。メジャーでの活躍後、2013年にタイガースへ。いまだ冷めない野球への熱い思いを、史上57人目の通算3000塁打達成という形で具現化し、更に13年ぶりの優勝を掲げたタイガース主将・福留選手にパーソナルなお話しも聞かせていただきました。

佐々木ゆめ

「まず私から最初の質問です。ご自身の道具に対するこだわりってありますか?」

福留孝介選手

「基本的に僕は、モノを変えたりとか大きなことはしないんです。ただ、自分が気に入るものっていうのは、とてもこだわっています。これがまた難しいんですけど…毎年、新しいグローブを作っていただいて、キャンプに入る前とかに自分の手元に届いて、グローブを嵌めて、それを本当に自分でゲーム用として使えるようになるっていうんだったら…そうだなぁ~、1年、いや1年半後になりますね。僕はそれくらい、すごく自分の形に自分でグローブを叩くっていうんですけど、ボールが納まる捕球面とかが浮いてこないようにとか、自分の手に馴染ますように、グローブの形を作るのにこだわり、時間をかけています。だから形を作って、でも作っている最中に“あっ、ちょっと自分のイメージと違う”と思ったら、その時点で、そのグローブは終わってしまうんです」

塩見珠希

「違うって思ったグローブは、どうなるんですか?」

福留選手

「練習用になったりとか、しますね。でもゲームで使えるグローブになったら、そのグローブは大体6~7年は使います。中はボロボロに破れていたりするんですけど、革をつぎはぎで足してもらったり、場合によっては縫ったりしてもらい、使い続けます。普通は6~7年も同じ靴を履いていたら、そろそろ靴を変えろよって言われるでしょう? 僕らは、グローブなどの道具は、それぐらい使うんですよ。だからバットも、プロへ入ってもう19年になりますけど、形も変えていないんですよ。重さも変えてないです。1回使って、自分で信用できるものは、こだわって、ずっと使っていますよ」

佐々木

「打撃などが不調のときなど、練習以外で、流れを変えるためにされることは?」

福留選手

「うまくいかないことっていうか、うまくいかないことしかないんですけど…うまくいったと思うのは、たぶん、いま野球をやっていて1回もないかな。本当に調子が悪かったりするときは、一切、野球のことは考えないようにしています。野球の練習もしないんですよ」

佐々木

「普通、調子が悪くなると練習をしたくなると思うのですが…そうではない、ということですね?」

福留選手

「普通、調子が悪くなる、練習したくなるんですけど…僕は1回、野球をやめる、というか…野球から離れるようにしているんです。野球を離れて、趣味の釣りをしたり…そういう風にして、野球とは全く違うことをして、野球を一切考えないんです。正直、考えてできるんだったら、考えるんですけど、考えてもできないんで(苦笑)。もう一切なにもしない、気持ちをシフトチェンジして、ニュートラルに戻した状態にしてしまう。オフシーズンに入ったりして、自分がバットを持ちたい。と、自然にそう思うまでは、全く違うことをやっています」

塩見

「最後の質問です。野球やソフトボールをやったことのない子供達にむけて、一言、お願い致します」

福留選手

「まず、なんでも試してみたらいい、僕はそう思うんです。試してみることによって、それが自分で好きになれるか、どうなのかっていう判断ができるようになる。多分、みんながやるから、それでは面白くないと思うんですよね。自分がこういうのをやってみたい、そう思った時点で興味がわいてくるし、好きになれるっていう可能性があると思うんだけど。なんでもいいんです、例えば川で石を投げるとかっていう…ほんの些細な、そういうことから何かのきっかけで、何かが生まれたり、変わったりするかもしれない。何かを楽しいと思えたら、そこから続けていくために重要なのは、やはり“好き”っていうこと。楽しいと思えて、次に好きになる、野球が上手いとか、下手とか関係なく、この2つを思えるようになれれば、全てのことが続けられると思う。間違いなく何をするにしても、この2つが大事なことなので、まずは始めてみましょう」


【取材後】

佐々木・塩見

「福留選手に、野球初心者向けにバッティングのコツを教えて頂きたいのですが…」

福留選手

「まずボールをバットに当てる…そこから考えてみましょう。ボールが向かってくることに対して、怖いから手元に(ボールが)来るまで見ようとするでしょう? バットに当たる瞬間まで、見ようと思ってしまうと思うんだけど…基本、バットにボールが当たる瞬間なんて、僕は見ていないんですよ。3mくらい前で、目線が切れているんです。だから、目線が切れているので、自分の頭の中で、ピッチャーが投げたところから、キャッチャーのミットに収まるまでの“ボールの軌道”を点線でイメージして“ここに、こうくるだろうなっ~”と想像する、そこへボールがきたら、当てるんです」

佐々木・塩見

「ボールの軌道をイメージして、その軌道上にバットを合わせる感じですか?」

福留選手

「振るから当たらなくて、バットをその位置で止めてみる、そんなイメージです。バットにボールが当たらないということは、要するに、自分の思っている位置とボールの軌道がずれているっていう意味なんです。だから振るんじゃなくて、最初はバットを止めてボールを当てるという感じで遊んでみるんです」

佐々木・塩見

「ボールの軌道を、考えてみるということですよね」

福留選手

「そう、そういうこと。当たるかな、ここかなって。で、当たったら今度はそこを少し振れるようにする、そうすると、徐々に当たってくる。いきなりはできないかもしれないけど、練習すれば、できるようになるはず。あと重たいバットを振っても当たらないはず、だから軽いバットで、自分の身長にあった、長さにあったバットを選んでみましょうね。それと初心者のうちは、バットを短く持った方が当たる可能性があがります。これができるようになったら、次のステップを改めて教えますよ」

佐々木・塩見

「わかりました、一生懸命、練習をして、次のステップを教えていただけるように頑張ります!!」

福留孝介選手へのインタビューを終えて

佐々木ゆめさん

「終始、野球のお話しをされる、福留選手の表情が、少年のように瞳をキラキラさせていたことが印象的でした。本当に野球が大好き、心底、野球を愛されている方だと思いました」

塩見珠希さん

「お話しの仕方がとても優しいんです、言葉を選びながら丁寧に取材に応じて下さったことが嬉しかったです。取材現場のあらゆる方に気づかいをされて、福留選手の人間性も感じることができました」


【PLAYER’S PROFILE】

阪神タイガース

福留 孝介(ふくどめ・こうすけ)

背番号8/外野手

【PROFILE】
1977年4月26日生まれ、身長182cm、体重90kg。鹿児島県出身。
右投・左打。
PL学園高-日本生命-中日ドラゴンズ(1998年ドラフト1位)-シカゴ・カブス(2008-2011)-クリーブランド・インディアンス(2011)-シカゴ・ホワイトソックス(2012)-阪神タイガース(2013-)

【タイトル】
首位打者:2回(02、06)
最高出塁率:3回(03、05、06)
MVP:1回(06)
ベストナイン:4回(外野手部門:02、03、06、15)
ゴールデングラブ賞:5回(外野手部門:02、03、05、06、15)
月間MVP:1回(野手部門:02【9月】)


インタビュー:横浜国立大学 佐々木ゆめ(ミスキャン横浜国立)、横浜国立大学 塩見珠希(準ミスキャン横浜国立)

ー 女子大生アンバサダー ー