●野球を始めたきっかけは何ですか？
野球をはじめたきっかけらしいものは特にないです。広島に生まれ、広島で育っているので、物心ついたときからカープファンだし、気付いたら野球をやっていました。当時は規制もなかったので、公園に行けばみんなが野球をやってる状態。友だちとキャッチボールをしたり、遊びで試合みたいなこともやって、野球をやることがすごく楽しかったですね。この楽しい思い出が、僕の野球人生の原点となっています。
最初にチームに入ったのは町内会のソフトボール・チームでした。小学校３年生の頃だったと思います。なぜ、ソフトボールなのかと思うかもしれませんが、これも深い理由はなく、身近にチームがあったから加入したということです。中学校に上がって軟式野球部に入りまして、高校に進学してから甲子園も目指しましたが、出場は果たせませんでした。その後、駒澤大学に進学したのですが、この大学で過ごした４年間がその後の人生に大きく影響しています。
●大学野球の思い出や人との出会いは？
駒澤大学硬式野球部の当時監督だった太田 誠さんとの出会いが大きいですね。東都大学リーグで通算501勝、22度の優勝を成し遂げたすごい方です。指導が厳しいのですが、愛情のある方でした。たいてい大学の野球部というのはテクニカルな指導が多いんですけど、太田監督は、野球だけうまくなればいいというものではない、野球人である前に社会人であれという教えで、あいさつや礼儀に大変厳しい方でした。振り返れば、この指導のおかげで人としてきちんと育てていただいたという想いでいます。実は、弟（新井良太選手、阪神タイガース所属）が進路を選ぶとき、駒澤大学への進学を薦めたのは僕です。弟は高校時代に甲子園に出てますし、高校時代の僕よりも実績は上だったので、さまざまな有名大学から誘いいただいてました。弟にはぜひ太田監督の下で野球をやってほしかったので、駒澤大学に行けと言いました。彼は入学してまもなく4番の座につき、優秀な記録を残しています。
●野球をやめようと思ったことはありますか？
これまで自分は高校、大学と、練習が苦しくて、すごく厳しい環境で野球をやってきましたが、野球をやめようと思ったことは一度もなかったですね。しんどいから練習をやめたいと思ったことは何度もありますけど、本当に辞めると思ったことはない。どうしてかと考えますが、結局のところ、野球が好きなんでしょうね。物心ついたときから野球をやってますし、将来の夢もプロ野球選手。野球がない生活は考えられませんでした。大学卒業を迎えると、なんとしてでもプロに行きたいという気持ちが強くなり、ドラフト６位で広島に入団することができました。
●東京オリンピックに野球が復活しました。どのように思いますか？
2020年東京オリンピックで、野球とソフトボールが正式に復活しました。これは大変喜ばしいことだと思います。野球は日本や韓国、北米や南米ではメジャーな競技ですが、世界的な競技かと言えばそうではありません。やはりサッカーのほうが競技人口が多く、特にヨーロッパでは盛んです。僕は、野球に携わってここまでこれましたし、野球の良さを日本人だけでなく、世界の人々にもわかってほしいという気持ちがあります。野球がオリンピック競技に復活することによって、世界中から注目をあびることになるでしょう。
これは僕個人の考えですが、オリンピック競技における野球は、アマチュア選手の目指すべき頂点であってほしいと思っています。とはいえ、僕自身は2008年の北京オリンピックに出場しているのですが、プロ野球にはWBC（ワールドベースボールクラシック）がありますし、オリンピックはぜひアマチュア選手だけで望んでほしいです。オリンピックがプロ野球に行けなかった人、社会人野球をやっている人、野球に携わる多くの方の目標になれば、そこにモチベーションが生まれます。
野球はプロ野球だけではありません。僕はプロ野球選手ですけど、もともとはアマチュア野球のお世話になってプロ野球界に入りました。オリンピックはアマチュア野球界のトップの大会と位置付ければ、日本代表選手になって世界一目指してがんばろう！という機運が生まれると思います。
●新井選手にとって野球とは何でしょう？
野球は僕のすべてであり、いまの自分を作ってくれたものです。野球はやればやるほど上手くなるし、技術が向上するという楽しみがあるのですが、最も大きなやりがいは、チームのみんなと喜びを分かち合えることだと思います。みんなで苦しい思いをして、みんなで悔しい思いをして、みんなで喜び合える。野球にはチームスポーツとしての醍醐味があります。ぜひ、野球をはじめて、たくさんの人と仲間をつくり、絆を深めてほしいと思います。
個人年度別成績 新井貴浩 – NPB.jp 日本野球機構
