野球は7割失敗しても諦めなければ成功者になれる:小西美加

日本女子プロ野球機構京都フローラ(KYOTO Flora)所属

●投げ方を褒めてくれた監督に入部を交渉

野球を始めたきっかけは3歳上の兄※の影響です。でも、女の子はチームに入れないので、本格的に野球をすることは考えていませんでした。ところが小学2年生のある日、少年野球の監督がボールを投げている私を見て褒めてくれたんです。これがうれしくて、「本気で野球がやりたくなった!だからチームに入れてください!」と申し出たら特別に入部させてくれました。
チームで初めて女子部員として入部できたものの、野球をやり続けていくには女の子は無理だと言われました。でも、私は負けず嫌いな性格なので、そう言われると余計にやる気が出て、小学4年生で投手として試合に出場し、キャプテンに。やがて父がチームの監督になり、家に帰っても兄とキャッチボールをしたり、眠くなるまで野球の話をしたりして、ますます野球にのめり込みました。
※社会人野球の硬式野球クラブ東海REXに所属していた小西正則選手

●野球の楽しさを教えてくれたコーチの存在

中学生になり、ボーイズリーグに入団して硬式野球を始めたんですが、ここのコーチから強い影響を受けました。このコーチは、野球を通して人とコミュニケーションをとったり、笑いを取ったり。野球をとても楽しんでいる方でした。
入団当初、男子に囲まれ体が動かないほど緊張していたのですが、コーチのおかげでずいぶん気持ちがラクになり、練習に行くのがどんどん楽しくなっていきました。
コーチとは今でも交流があります。女の子ということで、通常なら小学生で野球を終えてしまうんでしょうが、中学生でも野球を続けられる道筋を付けてくれたことをとても感謝しています。

●女が全力で投げて、男の打者を抑えられたらおもしろいだろう。

私はずっと「女だから野球はできない」「野球をやってはダメだ」と言われ続け、そのたびにいらだちや歯がゆさを感じていました。
では、どうすれば野球を続けられるのだろう。肩が弱くて、打てない女の子が「私はどうしても野球をやりたいんです!」と言っても、誰も相手にしてくれない。ならば技術レベルを上げて男の子よりも上手くなり、チームの中心選手になろう。女が全力で投げて、男の打者を抑えられたらおもしろいだろう。こんな気持ちを持ちました。
以来、ずっとこの想いを抱きながら野球を続けてきたように思います。

●「関西で硬式野球のチームを作りたい、一緒にやりませんか」と誘われました。

高校に上がって初めてソフトボールの世界に触れ、国体に出場し、大学時代には選手権3位という結果を残すことができました。ソフトボール部には野球をやってきた人もたくさんいます。その中に全日本クラブ野球選手権で野球をやってきた人と知り合う機会があり、「関西で硬式野球のチームを作りたい、一緒にやりませんか」と誘われました。私も中学生のときからずっと女子野球のチームをつくりたいと思っていたので、この提案を受け入れ、大学卒業後に硬式クラブチームを立ち上げました。最初は3名でスタートしたんですが、3年後には30名ほどに増えました。
一からチームを作り上げていくことはとても大変で苦労が絶えませんでしたが、貴重な経験になりました。

●女子ワールドカップ、夢の舞台での挫折

このチームで全日本クラブ選手権に入ることを目標に活動していた頃、私は女子ワールドカップに出場する機会を得ました。決勝戦の対戦相手はアメリカ。私は早く投げたくてうずうずしていたのに、いざマウンドに上がると足が震えて思うところにボールを投げられない。一人に打たれ始めると、次々と連打を浴び、失点を重ねて自らマウンドを降りました。
自分でも気付かなかった弱点が出てしまい、私のせいで優勝を逃したという気持ちでいっぱいになり、次はがんばろうという気持ちも起きず、これが限界かと思いました。相手に負けただけでなく、自分にも負けていたんです。しかし、この経験があり、野球への向き合い方が大きく変わっていきました。

●私が投げるのが嫌になるほど、打ってくる選手が出てきてほしいと思っています

26歳で女子プロ野球リーグに加入してから多くのタイトルを獲得し、優勝も経験したのですが、常に責任やプレッシャーと戦いながら試合に臨みます。大差で勝っても、もっとこうしたら良かったのではないかという考えが先に立ちます。
リーグでは選手として最年長になり、私を抜く若い選手が出てくれば引退したいと思っていますが、50メートル走でも私がいつもトップなのでやめられない・・・。レベルを落として道を譲るわけにもいきません。今後に期待できる選手はたくさんいますが、私が投げるのが嫌になるほど、打ってくる選手が出てきてほしいと思っています。

●女性の親しみやすさが好評の野球教室

小さい頃にボール投げを経験しているかいないかで、未来の選択肢は大きく変わってきます。私たちのリーグでも、ティーボールを使った野球教室を実施していて、子どもたちとふれ合いながら野球に親しんでもらっています。男性のプロ野球選手が各地の小学校を隅々まで回るのは難しく、そこを私たち女子選手がカバーしている状況です。
女性のほうが子どもは親しめるようで、私もまるで保育士さんのように、子どもに投げる、打つ動作を褒めて自信を付けさせています。

●野球は7割失敗しても、成功者と言われるようなスポーツ

野球を続けるには諦めない気持ちが大切です。野球は7割失敗しても、成功者と言われるようなスポーツです。エラーしようが、打てなかろうがそこで諦めないことが大切です。この考えは、野球以外の一般的な仕事にも通用するのではないでしょうか。
心の教育ができるのが野球です。私はこれからも決して自分に限界を作らないようにがんばります。

 

 

女子プロ野球・京都フローラ公式ブログ


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