野球で天国と地獄を味わった。 それでも野球が好き。

まずは、あの夏の甲子園での体験や野球への取り組みについて教えてください。

高校時代、甲子園の決勝でサヨナラホームランを打てたのは、本当にたまたまです。でも、ひとつ言えることは、自信を持って試合に臨めたからあのような結果につながったのだろうということです。あの大観衆の中では、もし自信がなかったら緊張で普段通りのプレーができないでしょうね。ですから、日々の練習は野球が上手くなるためだけでなく、自信をつけるためという面もありました。これだけ練習を重ねたんだから自分たちが負けるはずはないという気持ちになるよう、監督やコーチが仕向けてくれたんです。甲子園大会にしても県大会にしても、自信を持って臨めば、伸び伸びプレーでき、持てる力を最大限引き出せると思いますね。

高校、大学と続けられた野球体験を通じて得られたものについて教えてください。

僕は人生の中で野球を通して天国と地獄を味わいました。高校時代は運よく甲子園で優勝できて、たまたまこれ以上ないぐらいの結果を出しました。でも大学に入ってからは、ケガの影響もあって思うようにプレーできなくなってしまったんです。あの頃は正直落ち込みました。あれだけ好きで、青春時代のすべてと言っていいぐらい打ち込んできた野球が全力でできなくなったんですから。そんなことから、大学2年の時、野球そのものへの情熱さえ失いかけました。プレーできないショックのせいで、野球から目を背けたくなったんです。でも結局、僕は野球から離れることができませんでした。野球が好きな気持ちに変わりはないんだとあらためて思ったんです。ですから、就職する会社を決める際も、野球に関わる仕事ができる分野を選びました。思い返せば、社会に出る前に、最高に幸せな瞬間とどうしようもないどん底の両方を味わわせてくれたのが野球でしたね。長い人生を考えれば、自分にとってプラスになるすごくいい経験をしたと思っています。それに、こういうポジティブで前向きな考え方が身についたのも、野球をしてきたからなんです。


現在、SSKに所属されていますが、どんなカタチで球活に携わっておられますか?

私たちスポーツ用品メーカーの役割は、自分たちが専門家として理想の用具を追求するだけでは十分とは言えません。ユーザーが求めるものを作るという姿勢も必要なんです。ですから、できるだけ使いやすい用具、そしてスポーツを楽しめる用具を提供したいと思って日々商品開発に取り組んでいます。野球に関しても、やっぱりうまくプレーできなかったらそんなに楽しくないですよね。いいプレーができた時に野球の楽しさ、達成感が生まれると思うので、特に子どもたちにとって楽しさをサポートできる用具を作りたいと思っています。たとえば、野球のグローブですが、これは使っていくほどにその人に馴染んでいって、より使いやすくなっていくものなんですね。革でできているからなんですが、私たちはその素材としての革のよさを最大限に活かせるよう、製法に工夫を凝らしています。できるだけ早く手に馴染み、しかもベストな状態が長く維持できるようにです。 私たちが想いを込めて作ったグローブでいいプレーをしてくれたら本望ですね。野球をする楽しさを体験することに、陰ながら貢献できているんだなと実感できるので。

これからの球活としては、どのように取り組んでいけばいいと思われますか?

2017年のWBCでは、侍ジャパンが野球っておもしろいと思わせるような戦いを存分に披露してくれたので、多くの日本人が野球に注目してくれたと思います。この流れを大事にして、日本のプロ野球やメジャーリーグへの興味をより多くの方に持っていただけるようにしたいですね。そうやって野球ファンを広げていって、2020年の東京オリンピックを迎えたいです。そうすれば、競技種目として復活した野球に注目が集まって、いっそう盛り上がると思います。できれば、侍ジャパンがいい試合をして、勝ち進んでくれれば、野球の楽しさを強く印象づけられるので理想的ですね。今回は自国で開催されるオリンピックですので、これをきっかけに日本のスポーツ人口、野球人口が増えることを期待したいです。そんな中で私たちは、野球を楽しみたい人を増やすことに、用具提供などを通じて貢献していきたいと思っています。


最後に、安井さんにとっての球活の魅力を教えてください。

2017年のWBCが非常に盛り上がりを見せましたね。それは、選手全員が一丸となって、1プレー1プレーを必死に行う姿に、観ている人が感動を覚えたからじゃないでしょうか。日本人選手の活躍に、日本中が元気をもらったんでしょうね。そうやって選手が全力で戦うところが、野球が人を惹きつける原点だと思います。それと、野球は個人競技とは異なり、仲間と一緒に協力して取り組むところにも感動が生まれると思います。メンバーのミスをカバーしたり、逆にカバーしてもらったりして、絆が深まっていくんですね。私はそんな野球が大好きで、その普及をサポートする仕事に携われて幸せだと思っています。私たちの活動が、野球の楽しさを広めることにつながっていく。それが私にとっての球活の魅力ですね。球活を始めて思うのは、とにかくもっと野球のことを知って好きになってほしいということです。まずは気軽にキャッチボールをしてみてほしいです。それだけでも、自分の思ったところにボールを投げる楽しさを味わえるはずですから。今は、公園でキャッチボールをする親子などがどんどん増えている光景を思い描きながら仕事に取り組んでいます。